Taste of Tsukuba Project part 4



2. 鉄フレームに必要なのは「剛性」だけじゃなかった!?



「制振装置・パフォーマンスダンパー投入」


 前回のSATSUKI STAGEにて、リンク式HYPERPROツインショックへのトップアウトスプリング投入により、ポテンシャルUPを果たした新庄選手のZRX1200S。次なる策はというと、これまたTaste of Tsukuba初の試みだった。
いま巷で話題のパフォーマンスダンパーの投入である。



キーワードはシャーシの“粘性”


 元来、パフォーマンスダンパーはヤマハ社において、4輪のシャーシ開発部門で誕生した装置だ。
車体の走行性能向上において、フレームやボディの高剛性化に限界を感じていた開発陣が切り開いた別角度からのアプローチ。

 剛性だけでは抑え込めない何か。それは外部からの入力を受け変形した金属が元の形に戻るまで、バネのように何度も伸縮を繰り返す振動にあった。ここに着目したヤマハ開発陣は、大小様々な金属で構成される車体全体を一つのバネの集合体として捉えた。車体への入力に高剛性化で耐えるだけでなく、粘性を高めることで、入力後も続く車体全体の振動を打ち消す…これがパフォーマンスダンパー誕生の経緯である。

 バネのような連続した振動を抑えることにより、狙いとしていたハンドリング性能向上はもちろんのこと、安定性・乗り心地・静粛性にも効果をもたらしたパフォーマンスダンパーは、トヨタ系の高パフォーマンスモデルを皮切りに、様々なモデルに採用されていった。そしてその流れはヤマハ車を軸に2輪にも波及、その性能の評価を受けて、現在ではアクティブがヤマハ車以外のステーを開発・販売を請け負うに至った訳だ。




「最初は疑ってたんですけどね」


 先に書いたパフォーマンスダンパーの特性は、剛性の高くない鉄フレームこそ相性抜群。
レースでも良いパフォーマンスが得られるはず・・・チーム・オートボーイを担当する弊社スタッフの猛アプローチに

 「そこまで言うなら着けてみようじゃないか!」と新庄選手が応え、今回ZRX1200Sへのパフォーマンスダンパー装着に至った。

 新庄選手曰く、正直なところ効果のほどは懐疑的だったそう。「ほんとに効くの?」と。
しかし実際にコースを走った新庄選手から出た言葉は「疑ってごめんなさい!」だった!



  サーキット、とりわけ最高峰クラス・HERCULESのスピード領域では、鉄フレームの捻じれ(しなり・たわみとその揺り返し)のコントロールは非常にシビア。

ライディングをフレームの性格に合わせられないと、たちまち制御不能に陥ってしまう。
それがパフォーマンスダンパー装着状態では、フレームの捻じれの収束が明確に早い。全体的にハンドリングの安定性が向上、
結果としてポテンシャルの底上げにつながったというわけだ。

実際にレースウィークのテスト走行では何種類かのダンパーセットを試した末、非公式ながら57秒台をマーク。
本番に向けて確かな手応えを掴んでいた。