
ZRXで挑む“原点回帰”の挑戦 |
オートボーイJ'sが描くハーキュリーズの未来像 |
テイスト・オブ・ツクバ(T.O.T)の最上位カテゴリ「ハーキュリーズクラス」。 そこは日本全国のビルダーやショップ、ライダーたちが技術の粋を集めて挑む、いわば“草レースの最高峰”。 ハイパワーマシンがしのぎを削るこのクラスに、2025年、2台のZRX1200Sが挑む。 鴻巣代表が率いる名門ショップ「オートボーイJ's」。近年は最新マシンが上位を争うこのステージで、あえてキャブ車のZRXを選び、堂々と挑むその姿勢は単なる懐古ではない。T.O.Tのハーキュリーズとは何か? その本質への問いかけにもとれる。 |
![]() |
ハーキュリーズの進化──多様化するマシン構成と“技術競争”の現在地 |
かつてはGPZ900RやZRXといったキャブ車が主流だったT.O.Tハーキュリーズクラス。しかし近年、スーパーチャージャー搭載マシンKawasaki H2やスーパースポーツベースの高出力マシン、オリジナルフレームに最新エンジンを搭載したハイブリッド車両など、まさに自由な設計思想と技術力が融合したモンスターマシンたちがトップ争いに加わるようになってきた。 それらはハーキュリーズクラスの通念「鉄フレームでT.O.Tらしければ何でもアリ」の自由さ、そしてバイク文化そのものの多様性を体現している。 だが、そんな中でオートボーイJ'sが駆り続ける、あえてのZRX。しかも、その車両は市販品を軸とした“リアルなカスタム”である。 これは、いまのハーキュリーズに対する「反発」ではなく、「対話」である。 |
![]() |
技術勝負の原点へ |
現在のT.O.Tハーキュリーズクラスにおいて、ZRX1200Sがスペック面で見劣りするのは事実だ。 しかしオートボーイJ'sは、そこに価値があると考える。高度な電子制御や専用設計のフレームではなく、“誰でも手に入る市販ベースのマシン”をどこまで仕上げられるか。その挑戦は、ハーキュリーズクラスが持つ原初の精神「各ショップの技術力で勝負する草レース」そのものだ。 |
![]() |
2025年、2台のZRXがステージに上がる |
2025年のT.O.TにオートボーイJ'sが送り出すZRX1200Sライダーは2名。 1人目はT.O.T黎明期から活躍した故松下ヨシナリ選手のマシンを引き継ぐ新庄雅浩選手。現代の舞台でも通用するよう車体性能とスキルを磨き上げてキャブ車ZRXの意地を見せる。 もう一人、T.O.T初参戦の中村竜也選手は、オートボーイJ'sが新たにセッティングしたZRX1200Sでハイスペックマシン達に真っ向から挑戦する。 この2台のZRXに共通するのは、「極力市販品を使った、あるいは市販品の延長線上にあるカスタムで勝負する」という哲学。パーツサポートを担うのは「アクティブ」。そして、アクティブが東京モーターサイクルショー2025で展示し話題となった“スケルトンモデル”に採用されたカスタムパーツ群が、まさに中村選手のマシンに投入され実戦を迎える。 |
![]() |
![]() |
剛性と軽量性を高次元で両立
GALE SPEED TYPE-GP1S |
アルミ鍛造ホイールの代名詞とも言えるGALE SPEED。その中でもTYPE-GP1Sは、国内外での多くのレースから得られたフィードバックをもとに開発された軽量ハイグレードモデルだ。 ZRX1200Sのような重量級ネイキッドでもコーナリングの切り返しが格段に軽快になり、特に筑波のようなタイトなレイアウトでは武器となる。リム剛性とスポークのバランスにより、駆動伝達力とラインの安定性も向上。走りの“土台”を構築する重要なパーツだ。 |
![]() |
トラクション性能を磨き上げる
ACTIVE プレスフォーミングスイングアーム |
ACTIVEが誇るプレスフォーミング製法によって生まれたこのスイングアームは、見た目の精巧さに加え、走行時の「しなり制御」が大きな性能のポイント。 ZRX1200Sというハイパワーマシンにおいて、リアタイヤのグリップを最大限に引き出すことは至上命題。剛性一辺倒ではなく、適度なしなやかさを残すことで、筑波の複合コーナーでも過渡特性が扱いやすくなり、トラクションロスを最小限に抑えている。 |
![]() |
バランスの中核を担う“制振の要” HYPERPRO リアショック |
リアセクションの挙動安定性を司るのが、HYPERPRO製リアショックだ。高度な減衰セッティングが特徴で、筑波サーキットのような加減速が連続するレイアウトにおいても、車体の姿勢を常にフラットに保ち続ける。 また、GALE SPEEDやACTIVE製品とのマッチングにも優れており、車体全体の動的バランスを整える“芯”として機能する。 |
![]() |
車両には他にも多数のカスタムパーツが組み込まれている。ZRX1200Sという重量級マシンを自在に操るために選んだこの構成は、決して飾りではない。そのすべてに勝つための意図が込められているのだ。 |
開発実戦場としてのT.O.T──ショーバイクがサーキットを走る意味 |
アクティブが手がけるカスタムパーツをふんだんに投入したこのマシン。 オートボーイJ'sの卓越した技術に加えて、アクティブ開発陣が現地でセッティング等のサポートを行いサーキットで実走行を重ねる。 これこそT.O.Tのもうひとつの意義、「パーツの実戦検証の場」としての価値だ。展示だけでは語れない真価を、過酷なサーキットというリアルな環境で証明する。それがアクティブの姿勢であり、T.O.Tに寄せる本気度だ。 |
原点にして、最前線──ZRXという答え |
T.O.TハーキュリーズクラスにおけるZRX1200Sの存在は、決して懐古趣味ではない。市販車の延長線上でどこまで戦えるか?
技術力とは、電子制御や最新素材だけではないはずだ。多くの人にとって“手が届く現実”で夢を描けるレースをする。 オートボーイJ'sとアクティブが挑むZRXプロジェクトは、そんな問いに対する、ひとつの答えだ。 明日から始まるテイスト・オブ・ツクバ2025。 変わりゆく時代の中で、あえて変えない信念がある。ZRXが切り拓く「草レースの未来」を、どうかその目で見届けてほしい。 |
![]() |