- ZRX、魂をつなぐ走り -





序章:仲間の想いを胸に


2025年秋、TASTE OF TSUKUBA 神楽月ステージ。
オートボーイJ’s × ACTIVEのTASTE OF TSUKUBAプロジェクトは、今大会もZRX2台体制で挑む予定だった。 しかし、約1週間前に行われた全日本ロードレース選手権で中村竜也選手が負傷。今回は惜しくも参戦を断念することとなった。

中村選手の欠場が決まったあと、チームでは代役による参戦も検討され、関係各所との調整や車両準備が大会直前まで続けられた。しかし最終的に出走承認は下りず、今回は新庄選手のZRX1台体制で本戦に臨むこととなった。

ピットには中村選手の#17 ZRXが静かに佇み、その横で新庄雅浩選手の#71 ZRXがエンジン音を響かせる。 直接言葉を交わさずとも、“仲間の想いを受け継いで走る”という空気が、チーム全体に流れていた。

“二人で磨き上げてきたZRX”の想いを胸に、新庄選手は静かにヘルメットをかぶり神楽月ステージの舞台へと挑む。

この日、ZRXは一台で戦いに臨む。
だが、その走りは決して一人だけのものではない——。




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絆のZRX、2025年神楽月を駆ける





熟練の走り、再び ― 勝負の幕開け


曇り空の筑波。静寂を破るZRXの咆哮がサーキットに響く。

春のSATSUKI STAGEで確かな結果を残した新庄雅浩選手は、今回の神楽月ステージでも迷いのない走りを見せていた。今シーズンで全日本ロードレース選手権へのフル参戦はいったん区切りをつけることにした新庄選手だが、「ZRXに乗れることを楽しみにしていた」と語り、特別な想いを胸に筑波へと向かった。

SATSUKI STAGEを終えてからの約5か月間、ZRXにはいくつかのアップデートが施された。エンジンにはチューニングが加えられ、さらにリアショックにも仕様変更が行われ、エンジンパワーと立ち上がり時のトラクション感が見直された。鴻巣代表が率いる名門ショップ「オートボーイJ’s」に蓄積された確かな熟練の技のもと、新庄選手はセットアップを詰めながら、その変化を一つひとつ確かめていく。

マシンに装着されたQSTARZ LT-8000GTラップタイマーでは、GPS計測による精密なラップデータをもとに、走行後には走りの一つひとつを数値で検証する。わずかなラインのズレやスロットル操作の違いも可視化し、次の走りに反映させていく。「感覚」と「データ」、その両面からZRXを仕上げる姿は、まさに“職人”のアプローチだった。

[ 10月31日(金) 特別スポーツ走行 ]

曇天のなか、路面はドライコンディションを維持。
この日は一日2本の特別スポーツ走行が予定されていたが、午前の1本目のみ走行が実施され、2本目は悪天候により中止となった。もともと、2本目では別仕様のセッティングで走行テストを行う予定だったが、それも叶わず。 テストメニューの一部は翌日に持ち越されることとなり、チームとしてはやや厳しい条件下での挑戦となった。限られた走行時間の中で、新庄選手は足まわりとタイヤの動きを入念に確認。「小さな違和感も見逃さない」——職人らしい緻密なテストが続いた。

[ 11月1日(土) フリー走行 ]

午前中の限られた走行時間を使い、前日のフィードバックをもとにサスペンションの微調整を実施。路温上昇に合わせた減衰の変更と、旋回性を高める微調整が施された。短いセッションながらも、マシンバランスの完成度は確実に高まっていく。

[ 11月2日(日) 午前:予選 ]

朝から快晴。
前日の調整が功を奏し、ZRXは軽やかにコースイン。最終コーナーでは鋭いブレーキングを披露し、58秒267をマーク。6番手グリッドを獲得した。

「マシンの仕上がりは悪くない。まだ“ベスト”とは言えないが、手応えはある。決勝は序盤の展開がカギになりそうだ。」

その目には、結果以上に“走り”を求める職人の闘志が宿っていた。“ZRXは攻めるより、合わせるマシン。”以前、中村選手がそう語っていた言葉。その言葉通り、新庄選手の走りは、マシンの動きを読むように滑らかだった。無理に攻めず、合わせ、引き出す。それはまさに、ZRXと呼吸を合わせた“熟練の走り”だった。







緊迫の本戦、極限の駆け引き


[ 11月2日(日) 午後、決勝 ]

快晴の空の下、6番手グリッドからのスタート。
シグナルが落ちると新庄選手は鋭い反応を見せ、1コーナーの混戦を巧みにすり抜ける。序盤は5〜6位付近でポジションをキープしつつ、前走車との距離をわずかに縮める展開に。 焦りは一切ない。“自分のリズム”を狂わせず、淡々と走りながら、攻めどころを冷静に探っていた。

レースが中盤へ差しかかる頃、前方では先頭集団のレースがハイペースで展開。 新庄選手はその背中を追い、一気に差を詰めようと攻めの走りへシフトする。コーナー区間ではZRXをしなやかに振り回し、ブレーキングで距離を縮め、立ち上がりで食らいつく。しかし直線ではトラクション勝負でSS勢にやや遅れ、“追っては離れ、また追う”膠着した展開が続いた。それでも終始安定した走りで6位をキープ。ZRX特有の重量を感じさせない軽やかなコーナリングで自らのペースを高いレベルで維持し、レース終盤にかけても集中力は途切れない。周ごとにラインを研ぎ澄ませ、少しでも前へ出るためのポイントを探り続けた。

残り2周——。順位を維持しながらも、最後までアクセルを緩めることはなかった。リスクを抑えつつ、全身でZRXの動きを感じ取りながら集中を貫いた。ZRXの重さと長さを感じさせないスムーズなラインで、熟練の手が導くように最終コーナーを駆け抜け、堂々の4位フィニッシュ! チェッカーを受けた瞬間、観客からは拍手が沸き起こった。

「今回はタイヤを持たせながら自分のペースを守れた。ZRXとしては上出来のレースだった。」

そう語った新庄選手だが、走行後のピットでは「57秒台を出したかった」と悔しげに漏らす場面もあった。それでも、出場したキャブ車勢の中では堂々の1位を獲得。その結果は“生き物のように気難しいZRX”と向き合い、手懐け、共に走ってきた証でもあり、さらなる高みを目指す姿勢の表れでもあった。







ZRXという“生き物”と生きる


ピットに戻る新庄選手を迎えるスタッフたちの笑顔。そこには、単なる結果以上の達成感があった。

中村選手は、新庄選手の決勝の走りをピットから静かに見守っていた。かつて彼がそっと口にした言葉がある。
「この仕様でも戦えることを、自分の走りで証明したい。」
その想いは、瞳の奥に変わらず強く宿っていた。

彼が口にした“この仕様”とは、単なるマシンのセットアップを指す言葉ではない。それは、キャブ車 × 鉄フレームというZRXが抱える気質そのもの。最新の電子制御とも、SS勢の圧倒的な軽さとも違う、頑固で、しかしどこか魂めいた反応を返す“生き物としてのZRX”のことだ。このマシンは、扱う者を試す。わずかな温度、わずかな荷重、わずかな呼吸の違いで、牙を向くこともあれば、まるで心を許すようにしなやかに曲がることもある。“気難しい野生獣を手なずけるような走り”——それこそが二人が長く向き合ってきたテーマであり、新庄選手と中村選手は、それぞれのアプローチでその答えを探し続けてきた。

ZRXという古くて新しいマシンと真剣に向き合う2人の挑戦。ベテランと若手がそれぞれのアプローチで導き出した“合わせる走り”。 オートボーイJ’s × ACTIVEの挑戦は、今後も確かな歩みを進めていく。






挑戦は続く


今回の神楽月ステージでは、ベテラン新庄選手が経験に裏打ちされた確かな走りを披露し、チームとして2025シーズンを締めくくった。
#71 新庄選手のZRXパッケージとしての実力は、この大会で出し切った。レースが終わっても、挑戦の物語は終わらない。筑波で得た経験とデータ、そして仲間との絆は、次の走りへと確かにつながっていく。そして来季も、#17 ZRXがフル市販パーツ仕様車として参戦予定。その走りを通して、市販パーツが持つ性能と品質の高さを実戦で証明していく。その積み重ねが、アクティブが手掛けるパーツづくりに着実に反映されていくはずだ。
どんな形であれ、「走りを進化させたい」という想いは変わらない。ZRXがこの神楽月で残した軌跡は、チームにとって、新たな挑戦への原動力となるだろう。

これからも応援してもらえるよう、挑戦の姿を発信し続けていきたい。ZRXという“古くて新しい”挑戦を軸に、オートボーイJ’s × ACTIVEのチャレンジは、来季も進化を続けていく。





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新庄選手 ZRX






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