ZRX 2台体制、挑戦。

ベテラン新庄選手の粘りと、スケルトンZRX実戦投入






前回のあらすじ:ZRXダブルアタック始動


前回のPart.1では、2025年のテイストオブツクバ(以下T.O.T)でアクティブとオートボーイJ'sが仕掛けるプロジェクトをご紹介しました。
参戦を重ねてきた新庄雅浩選手のZRX1200S。そしてアクティブ スケルトンモデルをレース車両に落とし込んだ中村竜也選手のZRX1200S。“純正フレーム×水冷エンジン×キャブレター、電子制御なし”というT.O.Tイズムあふれるパッケージで、鉄フレームなら何でもアリのHerculesクラスに真っ向勝負を挑む道筋をご紹介しました。

そして今回はSATSUKI STAGE本戦で、この2台のZRXがどのように筑波を走ったのか、その詳細をレポートします。




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#71 新庄雅浩選手:参戦を重ね熟成されたZRX


T.O.Tではおなじみのお祭り男、熟練ライダー 新庄雅浩選手。
レース歴は幼少期から30年近く、ZRXでの実戦経験も豊富。T.O.T最上位クラスHercules(ハーキュリーズ)では歴代2位の通算5勝を挙げる。全日本ロードレース等にも参戦するなど第一線で活躍中。

重いZRXを自在に操るダイナミックなライディングは観る者を惹きつける。 加えて、緻密なセットアップ力と冷静なレース運びにも定評があり、そのバランスの取れたアプローチが勝負強さの源だ。

近年は若手育成にも注力しており、今回のT.O.Tでは中村竜也選手のアドバイザーとしても存在感を発揮していた。





#17 中村竜也選手:スケルトンZRXでの初陣、成長と試練

全日本ロードレース選手権JSB1000クラスにも参戦する若手実力派ライダー、中村竜也選手。普段は電子制御モリモリの高剛性マシンを相棒としており、「鉄フレーム×キャブレター×電子制御無し」でのレースは今回が初めてだ。

ほとんど初対面の車両ではあるが、持ち前のセンスと集中力で急速に適応。走行ごとにフィードバックを重ねてセットアップを詰める姿勢は高く評価されていた。
   そして10年来の師弟関係にある新庄雅浩選手のアドバイスを受けつつ、T.O.Tならではの空気の中で挑戦が続いていく。







5/9(金) 特別スポーツ走行
初期セット確認に集中。中村号は“スケルトンZRX”が実戦投入へ


金曜は終日ドライコンディションの中、各マシンの調整とテスト走行が行われた。
新庄、中村両選手ともに今シーズン初の筑波2000アタック。

新庄選手のマシンは当初、エンジンのアップグレードを予定していたが、パワーフィーリングや仕上がりに課題が残り、元のエンジンに戻す判断となった。まずは昨秋(KAGURADUKI STAGE)のセッティングから今回のコンディションにアジャストすべく、タイヤや車体の挙動を確認しながら周回を重ねた。

一方、中村選手のZRXはアクティブが製作した『スケルトンモデル』をベースとした新仕様で、今回が実戦初投入となる。
事前に筑波1000でシェイクダウンを済ませ、5/7にエンジンの慣らしを完了。この特スポから本格的なアタックが始まった。ビッグネイキッドでのレースは初ながら、全日本で培ったテクニックと新庄選手のアドバイスを頼りに、1つずつセットアップを詰めていく。終盤には早くも60秒を切り、59秒台に突入するなど好感触を掴む走行となった。


左:中村竜也選手 右:新庄雅浩選手





5/10(土) 特別スポーツ走行
ウェットコンディションで走行見送り。セッティング微調整


朝から終日雨に見舞われた土曜日。翌日の決勝レースがドライ前提であることから、両名ともこの日は走行を見送り、前日のフィードバックをもとにサスペンションのセッティングに時間を費やした。

中村選手のマシンは、当社のHYPERPRO開発責任者 宇田 知憲(ハイパーうだっち)が本人からヒアリング。リアの車高とフロントの油面を見直し、前後の荷重バランスを最適化してより攻められるセッティングに仕上げた。


左:中村竜也選手 右:宇田 知憲 (ハイパーうだっち)





5/11(日) Hercules予選
両選手とも59秒前半に突入!ZRX 2台が2列目からスタートへ


日曜朝の予選は快晴の青空の下、路面温度も上昇。マシンとライダー双方にとって、グリップ変化への対応が求められる状況となった。

新庄選手はタイヤの温度特性を見極めながらアタックラップのタイミングを調整。しかし、アタック中にベストが狙えるラップで、他車にややペースを乱される場面もあり、ピットでは悔しそうな表情を見せた。それでも59秒270で6番手を獲得。

一方、中村選手は前日のセッティング変更が功を奏し、車体の挙動が格段に安定。初の筑波2000予選にもかかわらず、59秒310を記録し7番手についた。走行後には「この流れでいけば、次は58秒台も狙える手応えがある」と語り、明るい表情を見せた。


#71 新庄雅浩選手
#17 中村竜也選手





5/11(日) Hercules決勝
スタート直後に中村選手がアクシデント。新庄選手は粘りの5位フィニッシュ!


決勝レースもドライコンディションでスタート。グリッド6・7番手から並ぶZRXの2台は、どちらも好スタートを切り、1コーナーまでに数台をかわす勢いのある立ち上がりを見せた。

しかし、その直後に波乱が起きた。中村選手はブレーキングで突っ込み気味となり、タイヤが暴れて旋回に持ち込めない状態に陥る。そこへ大外からまくってきた渡辺一樹選手とラインが交錯し、両者接触転倒となった。中村選手、渡辺選手はそのまま無念のリタイアに。幸い大きな怪我はなかったものの、中村選手は悔しさに加え、関係者への申し訳なさもあって、しばらくヘルメットを脱ぐことなくうなだれていた。

一方、新庄選手は序盤で3番手までポジションを上げる好調な滑り出し。しかし後半になると、パワー・重量・トラクションで勝るSSエンジン勢を抑えきれず、順位を徐々に落とす形となった。それでも崩れることなく安定した走りを続け、5位でチェッカーを受けた。


5位表彰台:新庄雅浩選手





レース後の温かいやりとり。渡辺一樹選手の心遣いに感謝


落ち込む中村選手をチーム関係者が心配する中、接触相手となってしまった渡辺一樹選手がすぐにチームテントを訪れ気遣いの言葉を届けてくれた。冗談交じりに場を和ませてくれたことで、重い空気も少しずつ和らいでいった。
あくまで“レースインシデント”であったと互いの健闘を称え合う姿勢を見せてくれた渡辺選手。そのプロフェッショナルな対応に、POWER-BUILDER&PRESTO CORSAのチームの皆さまと渡辺選手に心より感謝したい。

写真はオートボーイチームテントでの一幕。事前に謝罪に訪れていた中村選手の様子を気遣い、チームへも声を掛けに来てくれた渡辺選手。ありがとうございます!
左:新庄 雅浩選手 右:渡辺 一樹選手





“スケルトンZRX”の真価はこれから。2台体制の本領発揮に期待!


今回のT.O.T開幕戦は、新たに導入された“スケルトンZRX”の可能性を大いに感じさせる内容となった。
中村選手は59秒前半というポテンシャルを早くも示し、セッティングと経験の積み重ねで更なるタイムアップが期待できる。一方、熟練の新庄選手は、今回こそライバル達と渡り合う武器を欠く状況でありながらも、マシンを巧みに操りながらポジションを守り切る“職人の走り”を披露した。

スタート直後のZRX 2台が見せた競り合いは、今後のT.O.Tでの活躍を大いに期待させる内容だった。次戦こそ、2台揃っての快走が見られるよう、さらなる準備を進めていく。





GALLERY


中村選手 ZRX




新庄選手 ZRX






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